まず、皆さんに質問したい。「あなたの現在の仕事を、小学生に説明してください」。できるだろうか?
さて、私の中では「専門家」と「専門屋」は使い分けている。それは、上記の質問に答えられる人が「専門家」であり、答えられないが、他の「専門家」「専門屋」と共同で仕事ができる人を「専門屋」と定義している。
さて、私のこのBlogの前の「ノーベル物理学賞の小林誠先生に、物理に入るきっかけの本を伺った」という記事で、ノーベル物理学賞の香林誠先生の講演を伺った話を書いた。
前の記事では、小林先生が刺激を受けた本の紹介をした。今回は、その講演の内容について、少し書きたいのである。小林先生は、カビボ・小林・益川行列(CKM行列)を作り、クォークに3世代以上の対があること、またCP対称性の破れを説明できることを発見したのである。
この話、大学の物理を習ったものでも、非常に難しいのであるが、それを小林先生は高校生の学生にもわかるように話したのである。世の中には、物質と反物質があること。すべてのクォークの対があると思っていたが、その物質・反物質の対称性が崩れていることを理論的に説明したという小林先生の業績を、スライド10枚程度で説明されたのである。それも30分で。
まさに、専門家である。このように、専門に明るくない人に自分の仕事を話すことは、とても大切だ。それは、次世代の若手に興味を持たせ、その領域の発展に貢献する若手を育成できる。また、大きなプロジェクトの立ち上げの許可をもらうために、予算の権限を持っている人に説明することも、時には必要だろう。このように、簡単に自分の仕事を、その専門に明るくない人に説明するということは、科学者が専門家として存在知るためには、重要なスキルである。趣味でその領域を行う「専門屋」とは異なり。
このことは、科学の領域だけではないだろう。広告、マーケティング、Ad Technologyの領域でも同じことが言えるだろう。ぜひ、自分がその領域の「専門家」であれば、簡単な言葉で自分の仕事を伝えるように工夫したいし、常に考えたいものである。今回の小林先生の講演を聞いて、本当にさまざま参考になることが多かった。
さて、私の別な領域である、数学においては、
この遠山先生の本が参考になる。この1952年に発行された「無限と連続―現代数学の展望」では、
第1章 無限集合論
第2章 代数系の理論
第3章 位相空間論
第4章 現代幾何学
と、現代数学の基本となる考えを、平易な言葉で解説してくれている。
そろそろ、マーケティングにおいても、専門書ではなく、このような平易な本を出し、次世代のマーケッターを育成するだけでなく、理論の整理が再度必要になっているのかもしれない。
最後に、あなたは「専門家」ですか?「専門屋」ですか?
「ノーベル物理学賞の小林先生に見る、専門家と専門屋の違い」への2件のフィードバック