佐藤達郎先生の「これからの広告」の教科書を、さっそく読まさせていただきました。この本、「広告」と書いてあるので、広告の担当者がメインに思われるかもしれませんが、内容はコミュニケーション設計の話が中心で、ブランド・マネージャーにも参考になる本です。
あ、ブランド・マネージャーと広告担当者わかれていません?そうでしたね。大変失礼いたしました。
この本、非常に読みやすいスタイルになっていて、その読みやすいスタイルゆえに、コミュニケーション担当者の心がかなり痛みます。
それは、11のケーススタディーが、「Old Styleの広告会議」と「New Styleの広告会議」。「Old Styleの広告戦略」と「New Styleの広告戦略」の対比で解説されていることです。Old Styleは、今までのやり方で、見直すべき事柄で、New Styleが広告・コミュニケーションが変わった今取るべき方法です。が、私の日常の業務に重ねると、Old Styleでやっていることや、思い当たることが多く、心が痛くなるのです。まだ、多くのことをOld Styleでやっているなと…..
そして、ブランド・マネージャーにも参考になる理由は、この本の以下のような記述からもわかります。
有効なUSPを持たない商品が増えている。
これは、Brand Managerの責任では必ずしもありません。それだけ、科学技術が進化して、誰でも新しい技術を扱えるようになったということから来る課題です。マーケティングでは課題ですが、世界全体で考えれば、便利になったということです。
しかし、マーケッターはUSP(Unique Selling Proposition)が希薄な商品をマーケティングしないといけません。そこで、出てくるのがBrandの意思なのでしょう。Brandの意思は、他に真似されないものです。むしろ、真似をした時には、対峙している顧客の信頼を失うかもしれません。
この本の中でも、有名なDOVEの real Beauty Sketchの事例が出てきます。
この事例は、何度もその背景も含めて聞きましたが、USPではなく、Brand Storyであり、名詞のBrandではなく、動詞のBrandingを行っているコミュニケーションだと思います。
この本の中では、このようなBrandの意思を伝えるため考え方や必然について整理されています。
もう一つ、この本の中で私が初めて知った事例も、Brand Manegerなしにはできない、コミュニケーションです。それは、ルーマニアのチョコレート・バーROMの事例です。以下の動画が参考になります。
そう、コミュニケーションのために、パッケージを、ルーマニアの国旗からアメリカの国旗に変えるのです。これは、おそらくBrand Mangerの大きな判断がないとできません。この本では、
個別の表現よりも、「仕掛け全体」について、まず考える。
と、書かれています。しかし、「仕掛け」のためには、時には表現だけではなく、商品そのものも巻き込まないといけないわけです。
この本では、このように多くのケースから、「広告」の現在の考え方が整理されている本です。
そうそう、私が社内の会議でありそうな会話で気に入った記述は、以下です。広告のわかりやすさについて議論になる部分です。
さらに、この「わかりにくいものはダメ」で、「わかりやすいことが良い」とする判断基準をさらに進めて、「消費者は、少しでも頭を使わせたら、逃げていく」から、とにもかくにも「わかりやすくなければダメだ」と主張する広告主の担当者の方も少なくありません。 「池上彰さんを見てみなよ。あのわかりやすさ。池上さんの解説を聞きたくて読みたくて、視聴者が群がっているじゃないか」と、そういうわけです。 (中略) 池上さんの「わかりやすさ」の人気が高いのは、聞く人が「知りたくて聞きに来ている」という状況だからです。知りたいと思っていることがあり、それを「わかりやすく」解説してくれるからこそ、人気があるのです。 しかし、広告と解説は、大きく異なります。
そうなんです。広告と解説は違っていても、今ままでは、広告の商品の開設をしてきてしまっていたので、そこからなかなか抜け出せないのです。そんな共感をしつつ、この本では多くの広告についての整理ができ、自分のロジックも整理できる本でした。
本の詳細: