今日は、数学とビジネス、特にマーケティングとの話をしようと思います。みなさん、ご存知のように私達のマーケティングの世界でも多くのデータが取れるようになりました。昔は、会社で取れるデータ、広告の投資金額、商品の出荷数、売上金額のようなものが中心で、例えば製造会社・メーカーでは、どのような人が買ったかというデータは取れませんでした。
それが、最近ではインテージのiSSPのようなパネル・データが整ってきたり、自社でECサイトを展開したり、またはPontaカードのようなロイヤリティー・プログラムを使うことで、購買顧客の分析も行えるようになってきました。
これを、統計的に分析することは多くの企業でアプローチが始まっていますが、もっと数学という世界にもアプローチしても良いのではないでしょうか?
私の手元に、 という、本があります。この本、ヨーロッパで、産業界と一緒に行った数学的な研究がまとめられている本です。(この本、日本のアマゾンのこのページで購入できます。)
確かに、多くは科学・工学の事例が多いのですが、中には「Pricing model of Catastrophe Bonds with complete calibration procedure」というページもあり、マーケティングに近い領域でも数学は使われているので。(Linkは、Google Booksのページで、該当のページは読めますよ。)
実は、マーケティングの領域では、多くのソフトが発売されています。MarketingQED、MarketShare、Unica, Eloquaなどがそれらで、すべて海外製品です。使いこなせれば良いのですが、日本のマーケティングに対応しているのか。いや、日本が優秀なマーケティングをしているならば、日本からソフトが出てもという気持ちから、今年から文部科学省の数学イノベーション委員会に出席しています。
ここで、花王で取り組んでいる、数学とマーケティングの融合の話をしたり、他の企業の取り組みや、諸外国の数学の取り組みの話を聞くと、日本では大学をはじめとする研究機関と、産業界の交流、そして共同研究が少ないと思います。
今年、2度目の開催を迎えたiMedia Data Summitは、開催場所が東京大学ということもあり、アカデミアの先生や学生も参加しました。私が指導している院生も参加してくれましたが、その院生は大きな活躍の可能性を感じてくれました。
問題は、むしろ産業界の方なのかもしれません。もっと、自分たちだけで問題解決を行わず、アカデミアの力も借りる。競争が、グローバル競争になった今、日本の競合関係だけで考えるのではなく、グローバル勝つためのチームづくり、パートナー・シップが求められています。例えば、企業の中で、Data Scientistを育成するときに、例えば統計数理研究所の育成プログラムなど活用しているでしょうか?さまざまな、窓口をアカデミアの方では開けてくれています。
ところで、マーケティングに数学が必要な理由を最後に書きましょう。これからは、ますます「個」客マーケティングになります。さて、このことをいち早く行った金融の世界を考えましょう。個人ごとに提案商品を変える。このために、現在の金融資産の保有状況、その他公的機関から取得できるデータと、本人の希望を元に何千という製品から商品を提案したり、ラッピング信託を展開しています。ここには、多くの金融用の数学が使わています。リスクの予測や、当然収益の予測です。まさに、データ、統計、数学が三位一体になっています。
これから、「お金」以外のマーケティングも「個」客マーケティングになるのであれば、金融と同じ道を通るのでしょう。金融の「リスク」の代わりに、「ロイヤリティー」などを中心にしたマーケティングがメインになるのではないでしょうか。
マス・マーケティングではなくなりつつあるからこそ、多くのシナリオを作り、そのいくつかのターゲットには、金融でATMを使ってサービスを行うように、Automaticにする必要も出てくるのでしょう。そのためには、アルゴリズムやプログラムも必要なり、科学・工学的なアプローチもマーケティングには求められているのです。
(個客マーケティングについては、「個客マーケティングが拓く「企業と顧客の新しい関係」とは ― ニューバランス 鈴木健氏 × エスティローダー 日高千絵氏 ―」も参照のこと)
そんなことを考えると、マーケテイングに数学が必要だと私は強く思い、文部科学省で、アカデミアと産業界の融合に何が必要かを問い続けているのです。(余談ですが、最初の参加の会の議事録に「ぶっちゃけ」という言葉を残してみました。探してみて下さいね)
ぜひ、みなさんの意見も聞かせてください。日本を強くするのも自分の行動から。マーケティングを進化させるのも自分の行動からなので。
「もっと産業界で数学使おうよ。文部科学省 数学イノベーション委員会に参加して」への1件のフィードバック